2018年6月13日に新作ゲーム「NOSTALGIC TRAIN」がsteamでリリースされました。
このゲームはUNREAL ENGINE4を用いた美しいグラフィックが特徴のゲームで、クラウドファンディングによる支援を得て作られた個人制作ゲームという珍しい背景を持っています。
価格は2000円とsteamゲーにしては少々高めですが、和製ゲームの発展の可能性を示す良いゲームだったなと思うので、個人制作ゲームが気になるという人はチェックしてみてください。
目次
あらすじとトレイラー
steam紹介文
人が消えた田舎で記憶を失って一人目を覚ました私。 「夏霧」と書かれた駅。 単線の鉄道。 夏霧の記憶を巡る少し切なく幻想的なウォーキングシミュレーター。
個人制作ゲームとは思えないグラフィック
作者が10年ほどゲーム業界で背景モデリングを担当してきただけあって、本作はグラフィックにかなり力が入ってます。
自然と青空のコントラストは綺麗ですし、光の表現も中々。大作ゲームなどと比べたらさすがに及ばないのですが、個人制作であることを考えると十分すぎるくらいのクオリティを持っています。
マップの広さについては、このブログでよく紹介しているレインボーシックスシージのマップと同じくらいで狭いです。
しかし、クラウドファンディングの紹介ページでも書かれているように本作のマップはコンパクトな鉄道模型をイメージしたものなので、狭い割にロケーションは豊富で色々な風景を目にすることができます。
↓ちなみにクラウドファンディングのサイトはココ
https://camp-fire.jp/projects/view/40595
細かいところはまだまだな感
和ゲーにリアル寄りのグラフィックが少ないので余計にそう思うのかもしれないですけど、画面がかなり綺麗に感じます。
しかし、力が入っているとわかるオブジェクトはともかくとして、脇役的な建物や小物のグラフィックはPS2みたいでそこは残念でした。
↑の画像で言うと、電車内の壁が反射で木々を映すほどリアルなのに、自動販売機や本棚のテクスチャはのっぺりとしている。
素人並の予想ですが、おそらく電車はゲーム開発の初期段階で作成したものなので特に力が入っていたんじゃないかなと。それに比べて開発工程の後半に回された自販機などはやっつけ気味になってしまったのかも。こればかりは予算などの兼ね合いもあるので仕方のないことだと思います。
ゲーム性・シナリオは人を選ぶ
本作は神隠しに遭った主人公が、元の世界に戻るために田舎をあちこち探索していくゲームです。
探索は町のあちこちにスポーンする白いモヤモヤを踏んでストーリーを進める形で、ストーリー内容は悲劇的なものが多くて若干ホラー要素も含んでいます。
正直、内容はかなり重たかったですね(笑)
軽く内容に触れてしまいますが、川での水難事故のお話や戦後の捕虜収容施設のお話があったりします。自分は全然読まないのですが、こういうのを純文学と言うんですかね?
それが連作短編形式でブツ切りに出てくるので序盤から中盤にかけては読み進めるのがけっこう辛かったです。ただ、最終的にはお話が繋がって「なるほど!」とはなるので、読後感は後を引く形でしたが悪くありませんでした。(記事の一番下のほうで考察しましたが、かなり深いです)
まあ物語に可愛いヒロインが出てこないと嫌だという人は、避けたほうが賢明だとは思います。
値段とプレー時間
ノスタルジックトレインはsteamゲーにしては高い2000円という価格設定をしています。しかし、ストーリーモードをクリアするのに自分はたった4~5時間しか掛かりませんでした。
フリーモードで町を歩き回ったりして新たな発見をすることはできると思うのですが、それにしてもゲームのボリュームとしては少ないかな……と思います。
意欲的なゲームですし、買う場合はクリエイターにお布施するぐらいの気持ちで買ったほうがいいかもしれません。
率直な感想
個人制作のゲームって批判し辛いんですよね。
だって、1人でゲームを作るのはめちゃくちゃ大変だって素人でもわかるじゃないですか。
でもなぁ……やはり1ユーザーとしては、マップの綺麗さと個人制作の意欲って点を評価して2000円を出すのは微妙かなって思います。
steamの感覚で言うと、適正は800円くらいなのではって気がしますね。クリアまで4~5時間しか掛からなかったことを考えると、それでも高く感じるかもしれない。
あと、最初はこのゲームを見たときに動画や生配信向きなゲームだなーと思ったんですよね。
田舎の風景。散歩できる。個人制作ゲーム。要素は素晴らしいです。
でも実際にプレーしてみると動画などにはまるで向かないってわかります。
背景と文字とBGMオンリーで、内容はひたすら暗い。
steamのレビューにもあったんですけど、ちょっと想像としてたのと内容が違う。
いやー、でも1人でゲームを作れるって凄いんだよなぁ。良い点と悪い点がいろいろあって、偉そうな物言いになってしまいますがこのゲームは評価が難しいです。
ゲーム感想って難しい。
追記:シナリオを深読みしてみるとシナリオとマップ設定は普通に深かったので2000円でもオーケーなゲームかもなぁって思えてきました。
ストーリー考察
※ネタバレ注意
まあ考察というか、自分の中での整理ですね。妄想とか勝手な想像も含めているので、すごく読みづらいしスルーしてもいいです。
まずお話のスタート地点は、戦国時代に滅ぼされかけている武家が怪しい僧侶たちと契約してなんとか生き延びるところからですね。
生き残った武家とその家臣たちは山奥に村を作る。これが夏霧となっていく。
武家のリーダーはなんとか殺されずに済んだんだけど、自身と村の人達に末代まで続く呪いをかけられていると。
ここらへんどういう意味だったんですかね……。
とくに許嫁の姫関連がよくわかってなかったりする。
許嫁の姫が死んだのは呪いの最初の犠牲者かなって思うんです。で、村にある寺は姫を祀る場所。
そこには謎の存在「白猫」「黒猫」がいる。
こいつらがなんだったのかがまずわからない。現在・未来の時間に平行に存在している時空の神的な存在か何か?
つっても、そいつらが武家の人らを生き延びさせた代償に呪いをかける理由がいまひとつ不明。
単に嫌がらせが好きな悪魔か?
1周しかしてないから理解できてないだけなんだろうか……。
まあ、白猫・黒猫は置いておこう。
とにかく。
武家のリーダーはそのうち死んでしまって、その後、姫の転生体と同じ時代に輪廻転生する。
転生した2人は良い仲になるんだけど、武家リーダーの転生体が友達に日本刀でぶった斬られて死んでしまう。
姫の転生体である書店娘(主人公)は武家リーダーの転生体を救うために神隠しに遭い、平行時空の住人となる。
文にしてみて思ったけど、ここらへんかなり強引な感じがするんですよね。
親の期待に応えられないプレッシャーと、好きな子が自分に惚れてくれず友達を好いている嫉妬があるとはいえ、日本刀で友達ぶった斬るのはやり過ぎに思う。呪われているにしても。
あと、この転生体たちが生きてるのって戦前から戦後にかけてだから、マップに純喫茶とかカプセルトイ(ガチャの機械)が存在しているのはちょっとおかしい気もする。
純喫茶が広まったのは1955年あたりからで、カプセルトイがアメリカから輸入されたのは1965年くらいから。(wiki)
浮き輪が日本で販売されるようになったのは1951年ごろから。
主人公が平行時空の住人になったのが1940年頃と考えられるから若干年代がズレている。ゲーム制作のコスト的な面を見て各年代で背景を変えないにしても、主人公が転生した時期を基準にマップを作るべきだったんじゃないだろうか。
まあここは一旦置いておきます。
さて、平行世界の住人となった主人公は、武家のリーダーの転生体のために色々と救いを差し伸べる。
ここがゲーム本編の全てですね。リーダーの転生体を色々と助けてなんとかしてあげる。
ただ一箇所わからなかったのが、都会からやってきた先生の章。
ここだけシナリオの繋がりがないように思える。
いや?いま気づいたんですけどよくよく考えてみると、先生の章で登場した汚い男が戦争帰りの男だったとすれば繋がりますね。
都会から逃げてきた先生と男が結婚して絵が上手い娘が生まれて、その後、娘は村を出ていって幸せになった。
つまり、絵が上手い娘の代になって、ようやく武家リーダーの血筋は夏霧の呪いから開放されたのかもしれません。
となると、さっき年代がおかしいって言ったのも解決できますね。娘が呪いの輪廻から脱出した時点で、姫の転生体の役割は終わる。だからあの村のマップは1950~60年頃の建造物で溢れている。
そう考えると、すごく深いストーリーに思えてくるなぁ。まあ1周しかしてないので間違いまくってる考察かもしれませんけど、自分はこれがしっくり来るのでこういうストーリーだったと納得しおきます(笑)
時系列でまとめると。
姫・武家リーダー→【転生】書店娘・青年→書店娘神隠しで消滅・青年絶望→青年は絶望中年に・若い先生やってくる→中年と先生が結婚して娘誕生→書店娘が中年と娘に介入し、娘は呪いの輪廻から脱出して夏霧を去る→姫・転生体である書店娘は役割を終えて成仏→成仏したのが1960年代だからマップがああなっている。
戦国時代に政略結婚させられた相手のためにそこまで救うってどんだけ聖人なんだろう……。
まあ、なんとなく自分の中でお話は繋がったので良しとします。考察してみると中々考え深いシナリオでしたね……。
ただ、白猫・黒猫は結局謎。
最後に
このゲームを調べていて知ったんですけど、UNREAL ENGINE4は2~3年前から無償利用できるソフトウェアになったみたいですね。
もしかしたらノスタルジックトレインを皮切りに、今後もUE4を使った個人制作のゲームがいろいろ出てくるかもしれません。
そうなってくれると大作と凡作で差が広がりまくっている昨今の和ゲー界隈もちょっとは変わってくれるのかなぁと密かに期待しています。